仕事を行う上で、最低限必要な「行動レベルのスキル」が存在します。これは最小単位だと考えてください。さらに上には、行動を支援する「知識レベルのスキル」があり、管理者に必要なスキルが含まれます。その中で最も汎用性が高いのは「自分の知識を他者へ伝達する力」です。
例として、私の経験が豊富な小売業界を考えてみましょう。
小売業界では以下の業務が繰り返されます。
1、発注
2、入荷処理(入庫)
3、陳列
4、接客
5、会計
もちろん、企画や棚卸しもあり、販売された商品は補充が必要で、店頭の清潔さも大切です。しかし、仕入れから売上げまでの作業は販売業全般で必須です。
新人レベルのスタッフが陳列やレジ業務を担当することが一般的です。これはマニュアルやOJTを通じて学びます。反復練習と復習で最低限のレベルに速やかに達する必要があります。最初に目指すべきは「平均値」です。ただし、トップスピードだけを維持しすぎると、他のポジションへの移動が困難になり、リスクが高まります。平均値を超えたら、持ちうるノウハウを積極的に他人に伝えてください。そうしなければ、年々管理者になるのが難しくなり、会社はあなたに対して高い給料を払えません。
考えてみてください。5人のスタッフがいると仮定しましょう。みんなが1時間で3,000円の利益を生み出すとして、あなたが2倍の利益、6,000円を生み出すとしましょう。合計で18,000円の利益です。
みんなの時給は1,000円ですが、あなたの時給は2,000円にはなりません。おそらく1,200円程度が限度で、それも何年もかけて上がるイメージです。
しかし、あなたが他の4人にノウハウを教え、みんなが4,500円の利益を生み出すようになった場合、合計18,000円の利益が4人の働きによって生み出されます。
基本的に、会社や事業は拡大していきます。新たに4人が加わったとします。
元の平均値(3,000円)×あなた以外の8人だと、24,000円の利益が得られます。
一方、3,000円×4人+4,500円×4人だと、30,000円の利益が得られます。さらに、あなたが新しい人たちにもノウハウを教え、みんなが4,500円の成果を上げられたら、4,500円×8人で36,000円の利益が得られます。
わかりますか? 36,000円 – 24,000円 = 12,000円。あなたの教育の結果、12,000円分の利益を拡大することに成功しました。これはあなた2人分、当初の平均値の4人分に相当します。
あなたがノウハウを惜しみなく伝えた結果、自分一人では達成不可能な利益を上げることに成功しました。
通常の業務に従事して、みんなの4倍の利益を継続的に上げることは(一般小売では)不可能です。それはまさに分身しなければできません。
そこで、あなたは自分の分身を作り上げていく必要があります。
最初はみんな一般社員です。次に、現場リーダーとして後進を教育します。その後、あなたは現場リーダーを育て、教育者や管理者を育成していきます。これがいわゆるマネージャーです。
そのころには、あなたの給料はおそらく2,000円になっているでしょう。
給料を上げるには、あなた単独ではできないことを、あなたの力を使って成し遂げる必要があります。他人にノウハウを伝えることで、チーム全体の力を高め、自分のキャリアと給料も向上させることができます。